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記事2021年6月13日 2547号 (1面) 
ニューノーマルの教育の姿示す
教育再生実行会議 第12次提言まとめる
データ駆動型教育へ転換
具体化は文科省の中教審等で検討

 菅義偉・内閣総理大臣が開催する教育再生実行会議(有識者座長=鎌田薫・前早稲田大学総長)は6月3日、総理官邸で開いた第48回会議で「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について」と題する第12次提言をまとめた。提言は鎌田座長から菅総理に手渡された。提言は、ニューノーマルにおける初等中等教育の姿としてデータ駆動型の教育への転換と新たな学びに対応した指導体制等の整備、遠隔・オンライン教育の推進などニューノーマルにおける高等教育の姿、グローバルな視点での新たな高等教育の国際戦略、大学等における入学・卒業時期の多様化・柔軟化の推進など教育と社会全体の連携による学びの充実のための方策等について改革を求めている。今後、提言内容の具体的制度設計等については文部科学省の中央教育審議会等で審議が進む予定。


今なお収束が見通せないコロナ禍は、それ以前からの課題を含めて様々な課題を浮き彫りにしたが、日本ではこれまで子供の幸福度・自己肯定感や当事者意識が低いことが課題とされてきた。第12次提言ではこうしたことは大人を含め社会全体の課題だと指摘。その上で課題解決には過度な横並び意識を排して、いかに一人一人の自律と社会における多様性を高めていくか、想定外の事象と向き合い対応する力、不透明な未来を切り拓く力をどう涵養していくかなどはコロナ禍を機に改めて考えるべきだと指摘。その際、一人一人の多様な幸せと共に社会全体の幸せでもあるウェルビーイングの理念の実現を目指すことが重要とし、わが国の教育を学習者主体の視点に転換することが必要と強調している。


また、これからの教育については、ICTを活用してデータ駆動型の教育へと転換する必要があるとし、それにより学習履歴等の教育データを活用した一人一人に応じた指導や子供の状況や発達段階に応じた対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化が可能となり、デジタル教科書や教材にとどまらず、学習コンテンツや民間の知見も適切に活用することで、子供たちの可能性がさらに広がるとしている。


その上で初等中等教育に関しては、新しい教育のカギとなる1人1台端末の本格運用に係る環境整備について言及しており、低所得世帯向け通信費支援、視力低下を防止する対策等の推進、低所得世帯の高校への端末整備・通信費支援(国による)、将来的にはBYODへの移行も見据えデバイスの使用や考え方、将来的な支援方策の在り方の整理、クラウドの有効活用が可能となるセキュリティー対策を提示するよう求めており、今国会での個人情報保護法等の改正に基づき、学校教育における取り扱いを示し、今後整備する「ガバメントクラウド」を全国の学校や教育委員会等が活用できるよう、教育分野の情報システムの在り方について具体的な課題等を踏まえた対応方策を示すよう提言している。


また国に対して、学校・家庭で学習・アセスメントできるオンライン学習システム(CBTシステム:MEXCBT)を、希望する全国の小・中・高校等が活用できるようにすること、教師の質の向上と数の確保が両立できるよう、教員免許更新制や研修をめぐる制度に関して抜本的な改革を行うこと、特別免許状を含む教員免許の在り方の見直し、大学の教職課程を修了していなくても教師になれる多様なルートの確保、小学校と中学校の両方の免許状を取りやすくする制度的措置、学校における働き方改革や令和4年度に実施予定の勤務実態調査の結果等を踏まえ、法的な枠組みを含め教師の処遇の在り方等について検討するよう国に求めている。


一方、ニューノーマルにおける高等教育の姿に関しては、大学等が設置者の枠組みを超えて遠隔・オンライン教育等のリソースを共有・有効活用し、学生の多様な学修ニーズにきめ細かく対応できるよう、大学等連携推進法人の活用や大学コンソーシアム・大学間連携などの取り組みを通じた単位互換制度の活用、MOOCの戦略的活用促進等を国に求めている。また学生も学修目標および卒業生に最低限備わっているべき能力の保証として機能するよう「卒業認定・学位授与の方針」の具体的かつ明確な設定、私立大学等に関しては、数理・データサイエンス・AI教育の充実のための支援を行うこと、私立大学等の個性・特色を生かした教育研究の基盤となる設備・装置や、面接授業や遠隔授業実施の基盤となる構内LANの整備等に対する支援を国に対して求めている。


教育と社会全体の連携による学びの充実のための方策に関しては、国に対して、学びの多様化に対応した学事暦・修業年限の多様化・柔軟化を進める観点から、大学等の早期卒業・修了制度に係る解釈の明示化・周知、ギャップタームの取り組み成果の普及促進、定員の設定・管理の在り方や授業料の設定・徴収の在り方に係る考え方の整理など必要な支援を行うことも求めている。


このほか国に対して教育活動への寄附を促進するための有効な手法(クラウドファンディングを含む)に関する優良事例の収集や展開を図るよう提言している。

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