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記事2021年6月13日 2547号 (1面) 
中教審第161回大学分科会開く
教育再生実行会議の提言で質疑
魅力ある地方大学の在り方審議

 中央教育審議会の大学分科会(分科会長=永田恭介・筑波大学学長)は6月8日、WEB会議方式で第161回会議を開催した。この日の主な議題は、(1)6月3日に公表された政府の教育再生実行会議の第12次提言「ポストコロナ期における新たな学びの在り方について」、(2)魅力ある地方大学の在り方について。このうち(1)については教育再生実行会議担当室から概要が説明された後、中教審大学分科会の委員から質問が出された。労働組合関係者からは「産業界にも対応が求められている。雇用形態を変えていくべきだが、そうした点で具体的議論がされたのか」との意見が、また大学関係者からは、「単位そのものについて議論はあったのか」「大学の修業年限を多様化して3年で卒業ができるようになると、根本から変わってしまう。質の保証が行われないと問題があると思うが・・」「(改革には)財政的裏付け必要だが、見通しを伺いたい」「高大接続の在り方について議論はあったか」といった意見が聞かれた。また大学等における入学・卒業時期の多様化・柔軟化と産業界における新卒一括採用やメンバーシップ型中心の採用・雇用慣行の改革を並行して進めていく必要性が打ち出された点について、労働政策の専門家からは、「メンバーシップ型雇用や学卒一括採用は若い人の失業率を低く抑える社会的メリットがある。ジョブ型アサインメントは職業経験のない人には適さない」といった意見も出された。教育再生実行会議担当室は、「教育再生実行会議は提言を出すところまでで、実行は担当省庁」などと役割分担を説明。また改革提言の具体化を求められる文部科学省は、具体化については中教審で議論していただくとの方針を説明。永田分科会長も「提言をどう咀嚼(そしゃく)するのか、われわれの方に振られた」と語り、提言の具体化に積極的に議論していく考えを明らかにした。


  一方、(2)に関しては、文科省から、「魅力ある地方大学の在り方に関するこれまでの意見と今後の論点」が提案され、「これまでの地方大学関係支援施策について」の説明が行われた。内閣府からは「地方大学・産業創生交付金事業について」の説明が行われた。


 このうち「魅力ある地方大学の在り方に関するこれまでの意見と今後の論点」は、(1)地方大学の役割・地方大学を振興する意義、(2)「魅力ある地方大学」の考え方、(3)魅力ある地方大学を実現するための地域との連携の在り方、(4)地方公共団体や産業界等の役割、(5)大学が地方創生の取り組みを進める意義、(6)魅力ある地方大学の実現のための支援方策について―で構成されている。


 具体的には、▽地方創生や地域分散型のレジリエントな(=柔軟性のある)社会づくりが目指されている中での地方大学の在り方をどのように考えるか▽地方における高等教育には国立・公立・私立の大学や高等専門学校が存在しているが、地方創生を進めるに当たって、それぞれの高等教育機関の役割をどのように考えるか▽どのような大学が「魅力ある地方大学」か、また「魅力」とは誰にとっての、どのような魅力か▽「魅力ある地方大学」を実現するためには、どのような地域との連携の在り方が必要か。特に地方自治体の長がどのようにかかわることが望ましいか▽「地域連携プラットフォーム」や「大学連携推進法人」を普及させていくための方策、その際、真に効果的な連携が各地で構築されるための工夫や仕掛け▽国公私立や高専等の地域の高等教育機関を含めた魅力ある地方大学づくりを推進するための振興方策等が挙げられている。


 こうした提案に大学分科会委員からは、「文科省のCOC+はとてもいい事業だった。その方向性でさらに進めてほしい」「社会人の学び直しは大事。社会人の有給教育休暇を創設してほしい」「私学事業団は私大の地方創生の好事例をいくつも公表している」「各大学の取り組みにとどまらず、地方創生にどれだけ貢献したか指標づくりが必要」「県庁にも高等教育を扱う部署が必要だ」「地域のニーズ、地域の産業のニーズの掘り起こしをし、社会実装に取り組んでいる高専のノウハウを共有してほしい」「社会人の学び直しは長期間では難しい。2カ月で単位、修了証が取れるカリキュラムが必要」などの意見が聞かれた。次回大学分科会は7月21日の予定。

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