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記事2021年6月23日 2548号 (1面) 
第27回大学入試のあり方検討会議
審議のまとめに当たる「提言」原案審議
“共通テストで記述式等導入困難”

 文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」(三島良直座長=国立研究開発法人日本医療研究開発機構理事長)は6月22日、WEB会議方式で第27回会議を開き、審議のまとめに当たる「提言」の原案について審議した。提言の原案に関して委員からは、「大学入学共通テストへの記述式問題等の導入が平成元年12月に頓挫したのはずさんな意思決定だったことが原因だったことの反省、文科省はそのことで多くの受験生の信頼を失ったことをまず提言の最初に書くべきだ」といった意見が出されたほか、個別の大学入学者選抜等で記述式問題の出題や総合的な英語力(かつては英語4技能と称していた)の育成・評価、多様な背景を持つ学生の受け入れ、入学後の教育との連携、文理融合等の観点からの出題科目の見直し、入学時期や修業年限の多様化への対応などの取り組みを行っている大学へのインセンティブの付与を検討すべきだとの提言については、国立大学、私立大学から疑問や懸念の声が上がった。


 この日、会議に出席していた萩生田光一・文部科学大臣は退出の際のあいさつの中で、「1年以上オールジャパンの有識者で検討し、外部からのヒアリングも行ってきた。これで大きな方向性が出れば、大学の社会的役割を自覚して国公私立大学は大きな方向性を共有していただきたい。うちの大学は記述式出題はやらない、英語はどうでもいい、といったことはあってはならない」などと述べ、近くまとまる提言が実行されることへの強い期待感を語った。


 提言(原案)は、第1章「大学入学者選抜のあり方と改善の方向性」に始まり、第2章では「記述式問題の出題のあり方」、第3章では「総合的な英語力の育成・評価のあり方」、第4章では「大学入学者選抜をめぐる地理的・経済的事情、障害のある受験者への合理的配慮等への対応」を取り上げ、最終の第5章では「ウィズコロナ・ポストコロナ時代の大学入学者選抜」について言及、教育再生実行会議で問題提起された秋季入学と大学入試のあり方等について見解を示している。


 同会議設置の要因となった大学入学共通テストでの記述式問題(国語・数学)と民間の英語資格・検定試験を活用しての英語4技能の評価のうち、前者については課題の克服は容易ではなく、その実現は困難であると言わざるを得ないと指摘。その上で個別の大学での一般選抜のみならず、総合型選抜・学校推薦型選抜の活用も含め、効率的な採点・出題の工夫により出題増に努める方向で改善が図られることを期待。国に対して各大学における記述式出題を促進する方策の検討を求めている。


 一方、大学入学共通テストにおける4技能試験の開発の実現は技術の飛躍的進展等がない限り困難と判断。各大学の個別試験では受験生の地理的・経済的事情への配慮から資格・検定試験と個別学力検査のいずれか成績の良い方を選択的に使えるようにする等の措置の設定が望まれるとしている。同検討会議は次回で再度提言案を検討する。


 今後は、大学入試センター案、同検討会議提言を踏まえて、文科省の「大学入学者選抜協議会」で検討し、令和6(2024)年度に実施される新学習指導要領に対応した最初の大学入試に合わせて文科省は3年前(大学は2年前に出題教科・科目を予告。文科省はさらにその1年前に制度改革等を予告)しなければいけないため、今年夏には大学入学共通テスト実施大綱に係る予定、大学入学者選抜要項に係る予定を通知する。


 同協議会では今後、将来的な入試日程のあり方、高校会場の拡充の可能性、高校生のための学びの基礎診断の検証を踏まえつつ、いわゆる基礎学力テストの可能性等が検討される見通し。


 検討会議の提言の原案等については出席できなかった委員等から意見書が提出されており、吉田晋委員(日本私立中学高等学校連合会会長)は、「個別試験で英語の出題を継続しつつ、資格・検定試験スコアでの代替を認める方法であれば、地理的・経済的格差の問題は大きな問題とならず、大学にとっても取り入れやすいと考えられるので、積極的な取り組みを国としても推進願いたい」とし、また「(記述式の導入が不可能なのであれば)思考力・判断力・表現力を発揮しなければ解けない問題にさらなる改善を図るべきである」などと述べている。

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