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記事2021年6月3日 2546号 (1面) 
議員立法教員等による性暴力防止等法成立
文科省提出5法案が成立
データベース整備等定める
文科省提出の著作権法改正案も成立

 文部科学省は今国会に提出した五つの法案が、5月末までに、(1)「著作権法の一部改正法」を最後に全て成立したほか、超党派の議員6人が起草者となって衆議院文部科学委員会の左藤章委員長提出の、(2)「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が5月27日、参議院の文教科学委員会、翌28日の本会議でいずれも全会一致で可決、成立している。同法は一部の規定を除き、公布の日から起算して1年以内に政令で定める日から施行する。このほか文科省以外では、法務省提出の、(3)「少年法等の一部改正法」が5月21日に成立、5月28日に公布されている。ここに上げた三つの法律の概要を報告する。


教育職員等性暴力防止等法


「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」は5月21日の衆議院文部科学委員会で、超党派の6人の議員(馳浩議員他)が起草案を成案として委員長提出の法律案と決定すべきとの動議を提出、趣旨説明等の後、全会一致で起草案を成案として委員長提出の法律案とすることが決まった。衆議院本会議、参議院文教科学委員会、参議院本会議いずれも全会一致で可決、成立した法律だ。衆議院の文部科学委員会、参議院の文教科学委員会ではそれぞれで附帯決議が採択されている。


 同法は児童生徒性暴力等の防止等に関して国、地方公共団体、任命権者、学校の設置者、学校、教育職員等の責務をそれぞれ定めるほか、文科大臣に総合的かつ効果的に推進するための基本的な指針を定めるよう求めており、児童生徒性暴力等を行ったことにより免許状が失効した者・取り上げ処分を受けた者(特定免許状失効者等)の氏名、失効または取り上げ等の事由、原因となった事実等の情報に係るデータベースの整備等を定めている。


 ただし改善更生の状況等により再び免許状を授与するのが適当と認められる場合に限り、再び免許状を授与することができる、と定めている。


 授与に当たっては、都道府県教育委員会はあらかじめ都道府県教育職員免許状再授与審査会の意見を聴かなければならないとしている。


 また附帯決議では保育士についても同様の仕組みを検討することや、部活動の外部コーチ、塾講師、ベビーシッター、放課後児童クラブの職員等、免許等を有しない職種についても、わいせつ行為を行った者が二度と児童生徒等と接する職種に就くことができないよう、児童生徒等に性的な被害を与えた者に係る照会制度が必要としている。


 データベースの整備等に関しては、児童生徒性暴力等による処分のみとすることも求めている。


 さらに私立学校の教育職員等については、処分の決定がなされる前に依願退職する事例が見受けられ、その場合、教員免許状が失効しないことを踏まえ、退職前に適正かつ厳正な処分が行われるよう徹底するとともに、私立学校の教育職員等による児童生徒性暴力等への対応策について更に検討を行い、必要に応じて措置を講じることを求めている。萩生田光一・文部科学大臣は5月25日の定例記者会見で、「本法案を実効的に運用していく観点からは、基本的な指針の検討等に一定の時間を要すると考えられるところであり、関係者とも相談しながら、施行に向けた検討をしっかり進めていきたい」との考えを明らかにしている。


▼少年法の一部改正法


 「少年法の一部改正法」の提出理由について、同法は、「成年年齢の引下げ等の社会情勢の変化および少年による犯罪の実情に鑑み、年齢満18歳以上20歳未満の特定少年に係る保護事件について、ぐ犯をその対象から除外し、原則として検察官に送致しなければならない事件についての特則等の規定を整備するとともに、刑事処分相当を理由とする検察官送致決定がされた後は、少年に適用される刑事事件の特例に関する規定は、特定少年には原則として適用しないこととする等の措置を講ずる必要がある」としており、起訴後には原則、実名報道が行われることになる。


 同法は令和4年4月施行となる。


 こうした新たな法制度の中で、法務省は18歳・19歳は民法上、成年ではあるが、成長発達途上で可塑性を有する存在でもあり、家庭裁判所の処分決定には保護処分として少年院送致があることなどが同法に規定されていることから、今年1月に「罪を犯した18歳及び19歳の者に対する矯正教育(仮)に係る検討会」を立ち上げ、今年5月に報告書をまとめている。


 同検討会は、18歳・19歳を対象とした新たな教育プログラムを導入すること、高校卒業程度認定試験の受験や通信制高校への入学など学びの機会の確保、ICT技術の習得、複数の資格取得、多様な職業体験など時代のニーズに対応した職業指導種目の設置、入院早期から帰住先の確保や出院後の生活設計の調整など円滑な社会復帰を見据えた多様な活動などについて検討するよう提言。


 法務省では検討結果を踏まえ目下、矯正教育の見直しや少年院での処遇への取り入れを検討中。上川陽子法務大臣は5月28日の記者会見の中で「少年院では少年鑑別所と連携し、個々の在院者の成長の程度などを的確にアセスメントをすることが大変重要で、より効果的なプログラムや教育・指導が行えるよう速やかに検討を行い、しっかりと取り組みを進めたい」と語っている。


著作権法の一部改正法


 「著作権法の一部を改正する法律」は5月14日、衆議院の文部科学委員会で可決、同18日の衆議院本会議で可決。その後、参議院に審議の舞台が移り、5月25日の文教科学委員会で可決、翌26日には参議院本会議で可決し、成立した。衆・参議院とも全会一致での可決、成立だった。同法律は、(1)国立国会図書館による絶版等資料を直接、利用者に対してもインターネットを通じて送信できるようにする、(2)各図書館が著作物の一部分を調査研究目的でメール等で送信できるようにする(図書館等の設置者が権利者に補償金を支払う)、(3)放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化(放送番組での利用を認める契約の際、権利者が別段の意思表示をしていなければ、同時配信等での利用も許諾したと推定する規定を創設する)等を進めるもの。施行期日は、(1)に関しては公布日から1年以内の政令で定める日、(2)は公布日から2年以内の政令で定める日。(3)は令和4年1月1日。

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