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記事2021年7月23日 2551号 (1面) 
中教審第162回大学分科会開催
今年度内に制度改正へ 高校生の大学での履修
入学後の修業年限に通算可

 中央教育審議会大学分科会(永田恭介分科会長=筑波大学長)は7月21日、WEB会議方式で第162回会議を開催した。この日の議題は、(1)大学設置基準の一部改正、(2)大学院設置基準等の一部改正、(3)魅力ある地方大学の在り方、(4)高校生等が科目等履修生として大学の単位を履修した際の修業年限の通算、(5)大学入試のあり方に関する検討会議提言、の5点。このうち(1)は令和4年度医学部の定員増についてで、平成30年度の骨太の方針や昨年11月の文科省高等教育局長・厚生労働省医政局長通知を踏まえて令和元年度の定員を超えない範囲で暫定的に維持することとなったことを受けて、萩生田光一・文部科学大臣が、関連する設置基準の改正を諮問。諮問事項については、委員の異論はなく適当との大臣あて答申を了承した。医師の養成に関しては委員から医学部定員の地域枠や医師の働き方改革について議論の必要性を指摘する意見も聞かれた。


 (2)は、履修証明プログラムを各大学院での学位取得に活用できるようにする制度改正。具体的にはA大学院の履修証明プログラムにより修得した単位を、B大学院に入学した後の当該大学院における授業科目の履修により修得したものとみなせる(上限は15単位)、またB大学院に在学中に、履修証明プログラムにより修得した単位を、B大学院における授業科目の履修とみなし、単位を与えることができる(上限は15単位)といった内容の改正だ。ただし大学院が履修証明プログラムでの学修を大学院教育に相当する水準を有し、かつ、教育上有益と認めるときに限られ、何単位に認めるかは当該大学院の判断。


 また両者の合計()が20単位を超えない範囲が要件。今年度中に公布・施行の予定。履修証明プログラム(総時間数60時間以上)は学位課程より短期間のプログラムを社会人など学生以外の者に提供しようとして平成19年に創設された制度。


 本来、同プログラムは単位の修得や学位の取得を目指すものではないため、教育水準が学士・修士・博士等の各課程における教育に相当する水準とは限らない。60時間以上との要件も今後、検討される可能性がある。


 (3)の魅力ある地方大学については、内閣府と連携を取り検討している菅内閣の重要政策。この日の会議では、前回の議論に基づき加筆・修正した「魅力ある地方大学の在り方について(論点とこれまでの意見)」が説明され、最終章の「魅力ある地方大学の実現のための支援方策について」等が議論された。また国の次年度予算の概算要求(8月末締め切り)に向けて、永田分科会長と事務局(文科省)が作成した「魅力ある地方大学を実現するための支援の在り方について」(案)と題する文書が示され、意見交換が行われた。


 委員からは私立大学も地方での知の拠点として重要な役割を果たしていることから私大への支援の充実を求める意見、「地方高校→地元大学→地元企業」との思考からの脱却、地方の大学を魅力的にするもう少し大きな視点での構想を求める意見、そもそも魅力ある地方、地域づくりこそが重要との意見などが聞かれた。魅力ある地方大学の在り方については引き続き議論を行い、今年年末を目途に一定の取りまとめを行う予定。


 (4)は一般に大学入学資格を有しない高校生が科目等履修生として単位を修得した場合、当該修業年限の通算を行うことはできず、修業年限は変わらなかったが、相当年齢主義の例外が広がってきたことなどから、学校教育法施行規則の第146条を改正して大学入学資格を有しない高校生等にも当該大学入学後に修業年限の通算(その分早く卒業できる)を可能とする方向で、令和3年度内に速やかに制度改正を行う予定にしている。


 高校生に通常授業の履修機会を提供している大学は全体の28%、全国で高校生の科目等履修生は約1500人(平成30年度時点)に上っている。


 こうした高校生の大学での履修については、「大変意義深い。制度が普及するためには1単位3万円近い費用や入学金もかかるため、特別規定を考え、費用を安く設定しないと活用されない。またGPAなど質的規定を盛り込むべきだ」「4年制大学と付属高校で恒常的に大学を3年で卒業することにはならないか」といった意見が聞かれた。(5)は主に大学入試のあり方に関する検討会議の提言の報告。


 大学分科会の次回会議は10月12日開催の予定。

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