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記事2021年8月13日 2553号 (1面) 
学校法人ガバナンス改革会議審議状況公開
第2回で座長がたたき台提出提案
委員の意見を受け論点整理に

 学校法人のガバナンスの強化を目指し文部科学大臣の直属の機関として「学校法人ガバナンス改革会議」(座長=増田宏一・日本公認会計士協会相談役)が設置されたことについては本紙8月3日号1面で報告したが、このほど第1回会議(7月19日)と第2回会議(8月6日)の模様を収録した動画がYouTubeで公開された。同会議は予定では年内に計9回会議(※状況に応じて追加開催あり)を開き、来年の通常国会に私立学校法等の改正案を提出するスケジュールが決まっていることもあってか、審議を急いでいる印象が強い。複数の委員から「ガバナンスの正しい在り方は皆同じ」「ガバナンスは型」との意見が聞かれ、私学関係者等からの意見聴取に時間を割かないよう求める意見も出され、社会福祉法人等並み、あるいはそれ以上のガバナンス体制を確立するための機関設計を進めている。学校の現場の実情を十分に酌まず同会議の改革案が実施段階で上滑りせず、同会議が目指す攻めのガバナンスが定着するのか、先行き不透明だ。


同会議の設置趣旨は、「『経済財政運営と改革の基本方針2021』(令和3年6月18日閣議決定)に基づいて、公益法人として各種免税等税制上の優遇を受けることにより、国民から隠れた補助金(tax expenditure)を享受する学校法人制度について、社会福祉法人制度改革、公益社団・財団法人制度の改革を踏まえ、それらと同等のガバナンス機能が確実に発揮できる制度改正」などとしている。


第1回会議では増田座長が第2回会議には審議のたたき台となる座長案を提案したいと発言。さすがに委員から「ある程度たたき台ならいいが、それが結論になるのでは」「議論が矮小化(わいしょうか)する恐れがある、攻めのガバナンスの追求が必要だ」「2回目にいきなりたたき台が出るのであればついていけない」との発言もあり、提案するのは「論点整理」となった。


 また第1回会議では委員から「ヒアリングを重視しすぎだと思う。そもそも会議に利害関係人が入っているのはおかしい。時間配分を考えてほしい」との意見があり、その後も別の委員から「委員間のディスカッション重視賛成」「ヒアリングは最後でいいのではないか」などの意見が相次いだ。


 結局、第2回会議で冒頭、増田座長がヒアリングは書面で行い、同会議側が再質問してヒアリングするとの方式に変更する、などを説明した。


 また座長に法律アドバイザー(弁護士)を設けることも明らかにした。


 7月19日の第1回会議では、初めに藤原誠・文部事務次官があいさつを行い、事務局(文科省)から資料説明があり、検討するのは新しい学校法人制度の機関設計が中心課題で、前回の学校法人のガバナンスに関する有識者会議」(今年3月に提言をまとめる)で出ていない部分も扱うこと、都道府県所轄法人(高校等を持ち、大学等を持っていない学校法人)の財務書類の一般閲覧・公表、準学校法人、個人立幼稚園のガバナンスの向上も審議すること、今年12月に審議のまとめをした後には、私大団体が定めるガバナンスコードの抜本的改革も行う予定を説明した。


 審議予定については第3回、第4回、第5回会議でヒアリング・意見交換を行う予定にしていたが、私学関係者等からの意見聴取時間の圧縮を求める意見が相次ぎ、第2回会議ではヒアリングが第4回と第5回の2回に絞られ、その中では私立学校団体、全国知事会、海外事情等に関する有識者から聴取すると変更されている。


  第1回会議では、このほか事務局から、現行の学校法人制度、今年3月の有識者会議の提言で検討できなかった事項、社会福祉法人、公益財団法人の制度の違い(ガバナンス)をまとめた対比表が説明され、委員からは評議員会の機能強化を求めたものの、評議員の確保の難しさを指摘する意見、学校法人の特殊性にあまり過度にとらわれると本論から外れてしまう」といった意見が聞かれた。


 8月6日の第2回会議では冒頭、増田座長から日程の変更が説明され、第1回会議で予告した「論点整理」(増田座長と委員2人で作成)が提案された。


 論点整理は項目を挙げただけのごく簡単なものだが、目的では、「監督・経営を分離する。経営陣の利益相反・自己監視を排除する。税制優遇を受ける公益法人としての学校にふさわしい体制を構築する」としている。


 続いて1.原則法では「一般社団法人及び一般社団法人に関する法律」「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」「社会福祉法(第6章社会福祉法人)」の準用、独立行政法人通則法、国立大学法人法との平仄(ひょうそく)が合わない「責務」(私立学校法24条)等を挙げ、これ以降、機関設計、評議員、理事会、学長、監事、会計監査人、透明性・説明責任の担保を取り上げている。


 こうした提案に元学校法人理事長の委員からは理事会については性悪説、評議員会については性善説を取り、評議員会を強化すれば問題解決するとの考えはおかしい」との意見が出された。このほか「ガバナンスの正しい在り方は皆同じ」との趣旨の発言が複数の委員から出され、教学(学長)と理事会の関係についてのしっかりとした議論を求める意見、「理想形を示して法制化の骨組みを示せればいい」といった意見が聞かれた。


 同会議では8月20日に第3回会議を開催、有識者からヒアリングを行い、3日後の8月23日には第4回会議を開催するなど日程についても講師の日程などにより流動的に進められている。


第1回学校法人ガバナンス改革会議(7月19日)


第2回学校法人ガバナンス改革会議(8月6日)

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