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記事2021年9月13日 2555号 (1面) 
文科省の令和4年度概算要求
教職員による児童生徒性暴力等防止へ
特定免許状失効者等データベースの構築

文部科学省が8月末までに財務省に提出した「令和4年度概算要求」のうち私学助成関係予算については、前号で報告したが、今回は新規に要求している初等中等教育関係の事業について報告する。


 初等中等教育に関しては、今年、議員立法で成立した、児童生徒等の権利利益の擁護を目的とする「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」を踏まえて文科省は関連事業の総合的な推進に令和3年度の73億円を大きく上回る100億円を要求しているが、その中では二つの新規事業の実施を要求している。その一つが「特定免許状失効者等データベースの構築」で、要求額は1億5千万円。これは同法律の規定に基づき都道府県教育委員会が直接入力した特定免許状失効者等(児童生徒性暴力等を行ったことにより免許状が失効等した者)の情報を各教員採用権者(教育委員会・学校法人等)が即時閲覧できるようなデータベースを国で構築する事業。


また研修・啓発、早期発見・対処に関する取り組みとして、新たに「児童生徒性暴力防止推進事業」を実施する意向。要求額は1千万円。法や基本方針等を踏まえた各都道府県・市町村教育委員会の児童生徒性暴力等の防止等に関する研修・啓発や、児童生徒性暴力等の早期発見のための定期的な調査、事案発生時の調査の取り組み状況等について、状況把握や有識者による点検・分析を行い、必要な指導・助言を実施するとともに、その過程で得られた知見からモデル例・事例集を作成し、提供する事業。


 また、学習者用デジタル教科書普及促進事業については令和6年度を本格的な導入の最初の契機としており、令和4年度には前年度を35億円上回る57億円を要求しているが、その中では二つの新規事業を実施する意向。その一つ目が「学習者用デジタル教科書を活用した教師の指導力向上事業」で要求額は6千万円。発達段階や教科等の特性に応じた、デジタル教科書を活用した効果的な指導法を研究・実践し、教師の研修等に資する発信を行う事業。具体的には民間企業等1団体(全体統括)、大学・教育委員会等6団体に業務委託する。


 もう一つの新規事業が「デジタル化に対応した教科書制度の見直しに向けた調査研究事業」。要求額は7100万円で、教科書の検定・採用・供給の制度について、デジタル化に対応した見直しを行うための仕組みの調査・設計や調達を支援する。民間企業等1団体に業務委託する。


 学習者用デジタル教科書普及促進事業57億円の中核事業は私立小・中学校も含めて実際のデジタル教科書(1教科分)を活用しての実証事業で要求額は約51億円。


 また、「新時代に対応した高等学校改革推進事業」を新たに実施する。要求額は8億円。この新規事業は(1)普通科改革支援事業、(2)創造的教育方法実践プログラム、(3)高校コーディネーター全国プラットフォーム構築事業(PDCAサイクルの構築)からなっている。このうち(1)は令和4年度から設置が可能となる学際領域学科、地域社会学科を設置する予定の高校等に対して、設置に当たって義務化されている関係機関との連携協力体制の整備や、配置が努力義務化されているコーディネーターの配置など新学科設置の取り組みを推進する。1校当たり880万円、50校程度を支援する。


 (2)は教科等横断的な学びの実現による資質・能力の育成推進のため、遠隔・オンライン教育や質が確保された通信教育を活用した新たな方法による学びを実現するもの。具体的にはSociety5・0に対応する先端的な学び、自分のペースでの学修に着目し、同一設置者の学校間のみでなく、他地域における大学や研究機関、国際機関等の関係機関からの同時双方向型の授業を取り入れたカリキュラム開発を行い、新しい学びを創造する事業。30箇所を選定する。1校当たり1100万円補助する。(3)は高校と地域、関係団体等とをつなぐコーディネーターの全国的プラットフォームを構築する事業。1団体に委託する。予算要求額は2千万円。


 「読書活動総合推進事業」を新たに展開する。予算要求額は9千万円。次期「学校図書館図書整備等5か年計画」(令和4年度から令和8年度)に合わせて、また読書離れ防止の観点等から、図書館・学校図書館等を活用した読書活動の推進、司書教諭講習の実施、「子ども読書の日」(4月23日)の理解推進、読書活動の推進等に関する調査研究を行う。

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