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記事2021年9月3日 2554号 (1面) 
経常費補助私大等3,015億円、高校等1,051億円
文科省が来年度概算要求提出
耐震化等の促進加速
私立小・中学校生家計急変世帯支援へ

 文部科学省は8月31日までに「令和4年度概算要求」を財務省に提出した。同省の要求・要望額は5兆9161億円。前年度予算額と比べ6181億円(11・7%)の増額要求となった。私学助成関係の要求総額は、経常費補助と施設・設備等補助を合わせて4388億円+事項要求(前年度予算額は4085億円)で、耐震化等の促進に関わる国土強靱化予算が事項要求となっている。


 「私立大学等経常費補助」は前年度比40億円増の3015億円を要求している。うち一般補助は2786億円(前年度比30億円増)。特別補助は229億円(同10億円増)。一般補助に関してはアウトカム指標を含む教育の質に係る客観的指標を強化し、メリハリある資金配分による質の向上をさらに促進。一方、特別補助ではわが国が取り組む課題を踏まえ、自らの特色を活かして改革に取り組む大学等を重点的に支援する。


 具体的中身は、(1)私立大学等改革総合支援事業に114億円(前年度予算額110億円)を要求。自らの特色を活かした改革に全学的・組織的に取り組む大学等を重点的に支援するもの。114億円には特別補助に加え、一般補助が含まれている。


 Society5・0の実現等に向けた特色ある教育の展開(タイプ1)や、イノベーション創出等に寄与する研究など「特色ある高度な研究の展開(タイプ2)、地域社会への貢献(タイプ3)、社会実装の推進(タイプ4)の4タイプで支援する。タイプ1、3、4は1校当たり1千万円程度、タイプ2は2500万円程度の交付額を想定している。


 (2)大学院等の機能強化への支援に121億円(同118億円)を要求。基礎研究を中心とする研究力強化、若手・女性研究者支援等、大学院等の機能高度化を支援する。(3)私立大学等における数理・データサイエンス・AI教育の充実に8億円(同7億円)を要求している。モデルカリキュラムの策定や教材等の開発、全国への普及展開を進める私立大学等を支援する。


 「私立高等学校等経常費助成費等補助」は、前年度比41億円増の1051億円を要求している。内訳は、(1)一般補助が前年度比9億円増の861億円、(2)特別補助が同24億円増の154億円、(3)特定教育方法支援事業が同8億円増の37億円。(1)は都道府県による私立高校等の経常的経費への助成を支援する補助事業。(2)は私立高校等の特色ある取り組みを推進するため都道府県による助成を支援する事業で、内訳は次世代を担う人材育成の促進やICT教育環境の整備等行う教育改革推進経費に64億円、幼稚園等特別支援教育経費に75億円、授業料減免事業等支援特別経費に14億円、過疎高等学校特別経費に1・5億円を要求している。


 授業料減免事業等支援特別経費14億円の中には令和3年度までの5年間行われてきた「私立小中学校等の経済的支援に関する実証事業」での調査で年収400万円未満の世帯の55%が入学後に家計急変したと回答していたことから、同実証事業の成果を踏まえ、「私立小中学校等における家計急変世帯への支援」を新規事業として要求した。事業内容は、家計急変後の年収が400万円未満相当(初年度は都道府県の定める基準を満たす世帯)が対象で、支援額は年額36万円(初年度は都道府県の定める額)、費用負担は国と都道府県がそれぞれ2分の1、学校の負担はない。


 また(3)特定教育方法支援事業37億円は特別支援学校等の教育の推進に必要な経費を支援する事業。


 「私立学校施設・設備の整備の推進」事業は前年度比222億円増の321億円+事項要求をしている。大学等、高校等を合わせた要求額だが、(1)「耐震化等の促進」が前年度比119億円増の167億円。昨年12月に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の2年目として、校舎等の耐震改築・補強事業や非構造部材の落下防止対策等の防災機能強化を重点的に支援する。事項要求分は国土強靱化関係予算(加速化・深化分)で金額は未定。


 167億円の内訳は、耐震改築(建替え)事業が87億円、耐震補強事業が72億円、その他耐震対策事業(非構造部材の落下防止対策等の安全対策、利子助成)が8億円。私立学校の耐震化率が9割を超えたことから災害時には地域住民の避難場所等ともなる私立学校施設の耐震化の早期完了を目指す。


 このほか日本私立学校振興・共済事業団による耐震化融資が実施される予定。貸付見込額は175億円。同事業団による融資事業(貸付見込額)全体は600億円規模となる見込み。


  (2)「教育・研究装置等の整備」には前年度比102億円増の154億円を要求している。


 要求の内訳は空調・換気設備やトイレのドライ化、バリアフリー化、アスベスト対策及び防犯対策による安全・安心な生活空間の確保のための整備支援、教育研究の質の向上に資する施設の高機能化(校内LANの整備など)、エコ改修などの整備支援を目的とした私立学校施設環境改善整備に前年度比45億円増の53億円を要求。補助率は大学が2分の1以内、高校等が3分の1以内。


 また「私立大学等教育研究装置・設備」に前年度比54億円増の85億円を要求している。これは私立大学等の教育・研究用の装置の整備、ICT施設(構内LANを含む)の改造工事等への支援(補助率2分の1以内)と、私立大学等の教育・研究用の設備(学生等がデジタル技術を活用した高度な教育を享受するために必要なシステムを含む)の整備への支援(補助率:教育基盤設備2分の1以内、研究設備3分の2以内)を目的としている。


 「私立高等学校等ICT教育設備」には前年度比3億円増の16億円を要求している。補助率は2分の1以内。


 このほか、日本私学教育研究所に対する補助(私立学校教員研修費等補助)については2千万円を要求している。


 高等学校等就学支援金等は4119億円の要求。制度面で大きな変更はない。高等教育の修学支援の確実な実施については事項要求(前年度予算額5840億円)としている(内閣府に予算計上、文科省が執行)。制度面で大きな変更はない。前年度の5840億円の内訳は高等教育の修学支援新制度(授業料等減免・給付型奨学金)が4804億円、無利子奨学金の貸与基準を満たす希望者全員への貸与の確実な実施が1036億円。

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