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記事2022年2月3日 2568号 (1面) 
中教審第127回教育課程部会開催
特異な才能の「論点整理」
CSTIワーキンググループの中間まとめ等議論

 中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会(部会長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は1月24日、第127回会議を開いた。この日は、(1)文部科学省の「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」が昨年12月17日にまとめた「論点整理」について、(2)内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(略称:CSTI)の下に設置されている「教育・人材育成ワーキンググループ」が昨年12月24日にまとめた「中間まとめ」について、(3)高等学校等における日本語指導の制度化について、それぞれ審議したほか、(4)今年4月からの実施となる高等学校の新学習指導要領の実施に向け東京都教育委員会等の取り組みを聴取した。


このうち議題(1)の「論点整理」については同有識者会議の岩永雅也座長(放送大学長)が説明した。その中では、ウェブアンケートを実施、特異な才能の内容や学校で経験した困難等について保護者や特異な才能を持つ本人等からの回答も参考にして、6回の会議を経て論点整理を取りまとめたこと、今後の検討の方向性については全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実の一環として検討していくこと、検討の留意点としては学校種の特性を踏まえ、学校外の学びの場など、広く児童生徒の特性や困難に応じた対応策を検討すること、デジタル社会の進展を踏まえ、教育課程の共通性との関連に留意する、とした。今後引き続き審議し、令和4年中には「まとめ」を策定する予定だなどと説明した。


こうした報告に委員からは、「特異な才能のある子供にも協働的な学びは必要。他者に教えるプロセスを通じて自分の学び、理解を深める機会になる」「国立大学の付属校はそもそも実験校。そうした特異な才能のある子供の教育に力を入れるべきだ。公立学校に特例校を設けるのも一つの方法。高校にいて大学の授業を履修した場合、当該大学けではなくそのほかの大学にも使える単位として認めてほしい」などの意見が出された。


岩永座長は、「国立大学の付属校に関しては、こうした子供の研究を先鋭的に進めることを期待している」などと語った。


また議題(2)の「中間まとめ」については内閣府の合田哲雄審議官が説明。今回の中間まとめは国民からの意見募集や更なる審議を経て令和3年度中に最終とりまとめとなる政策パッケージの策定につなげる予定で、今後5年程度の時間軸の中で子供たちの学習環境をどのように整えていくのか、各府省を超えて政府全体としてどのように政策を展開していくのか、そのロードマップの作成を目指すことが本政策パッケージ策定の目的としている。この中で3本柱の政策、具体的には、(1)子供の特性を重視した学びの「時間」と「空間」の多様化、(2)探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムの確立、(3)文理分断からの脱却・理数系の学びに関するジェンダーギャップの解消、を掲げており、このうち(1)に関しては個別最適な学びの本質は自分で自分の学びを調整しながら、試行錯誤を繰り返すことであり、多様な子供たちが協働で学ぶ機会が確保されることが学校教育の役割としている。


(2)に関しては、社会、学校、保護者における特異な才能のある子供に対する理解・認知、学校外のプログラムへの参加が本人の教育課程上の学修ポートフォリオに位置付けられる仕組み、意欲の高い小中高校生の大学や高専、SSH指定高校、企業等での受け入れ、他の学校での学習の単位認定、探究・STEAMの学びの成果発表の場の提供・対象年齢の特別枠の設定などを目指すイメージとしている。(3)に関しては保護者や学校、社会によるジェンダーバイアスの排除、大学入学定員の在り方の見直し、専門性を持った教師が理数科目を担当するなどを目指す姿としている。


こうした中間まとめに教育課程部会委員からは、「不登校特例校の必置化、校長による履修認定基準の明確化・簡略化が必要」「理数系でもバイオ関連には女子生徒の進学が増えているものの、数学、物理はなかなか増えていない」などの意見が出された。議題(3)に関しては、文部科学省総合教育政策局国際教育課から高校における日本語指導についてニーズの高まりを受けて日本語指導に係る「特別の教育課程」の編成・実施に関する制度案、具体的には21単位を超えない範囲で卒業までに履修させる単位数(74単位以上)に含めることができる、個別の指導計画の作成に努める等が説明され、今年3月末までに学校教育法施行規則等を改正し、令和5年4月1日から運用を開始するなどが説明された。基本的には委員から了承されたが、地方での指導人材不足を懸念し、オンラインによる質の担保を求める意見や文化的なサポートの重要性を指摘する意見も聞かれた。


1月24日の中教審教育課程部会

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