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記事2022年3月13日 2572号 (1面) 
第4回学校法人制度改革特別委員会開催
評議員会による理事解任事由を法定か
会計監査人制度導入で議論
次回にも報告書取りまとめ

 文部科学省の「大学設置・学校法人審議会学校法人分科会」に設けられた「学校法人制度改革特別委員会」(福原紀彦主査=中央大学法科大学院教授・弁護士)の第4回会議が3月9日、オンラインで開催された。この日で学校法人のガバナンスに関する個別の論点についての議論をほぼ終え、次回・第5回(3月17日)で私立学校法の改正に向けた同委員会としての報告書案を審議し、早ければ第5回で審議を終結する見通しだ。議論が長引いた場合は3月22日に第6回を開く予定。


 第4回委員会では、初めに日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長)から3月4日付で提出された「学校法人ガバナンス改革に関する主な論点」に関する意見(3)が嵯峨実允委員(同連合会常任理事)から説明された。意見書では、中学高校法人の監事については、ほとんど無報酬で依頼している中で監事の役割・権限の強化により責任・業務量が一層大きなものとなれば人材確保がより困難になること、また現在、私立学校法に基づき監事による財産状況等の監査を受け、私立学校振興助成法や学校法人会計基準に従い公認会計士または監査法人による日常的な会計指導を受けつつ、公認会計士等の監査や都道府県のチェックを受けた上で計算書類や収支予算書を所轄庁に届けるなどしている中で、この上、会計監査人を学校法人の機関として設置する必要がないのではないか、中高法人以下についてはその規模や地域性を鑑み、会計監査人の設置等の義務付けの対象外とすべきだと求めている。


  会議ではその後、前回からの続きとして「学校法人ガバナンス改革に関する主な論点」のうち、監事、会計監査人、内部統制システムの整備、事業活動実態に関する情報開示、その他(子法人の在り方、過料・刑事罰の在り方・寄附行為の名称)の審議に移った。


 冒頭、川並弘純委員(日本私立短期大学協会常任理事)は、大臣所轄法人に区分される短大法人には小規模な法人が少なくないことを頭に入れてほしいと要請。その後、公認会計士の佐野慶子委員が会計監査人の機関としての設置、会計監査人と監事との連携について、私学関係者の間に誤解があるとし、幼稚園法人等も含め全体の約98%が現在、私立学校振興助成法に基づき公認会計士または監査法人による監査を受けていることを挙げて、助成法に基づく監査を私立学校法に法的根拠を移し、監事が職業的専門家である公認会計士・監査法人に実務を委ね、監事は結果の相当性を判断すればよく、また連携とは情報の共有であり、現状と比べ学校法人の負担が増えることにはつながらないと指摘した。


 尾崎安央・早稲田大学法学学術院教授も同趣旨の発言を行い、監事は公認会計士・監査法人の監査活動に協力、それを監督すればよく、一層業務監査に注力できるなどとした。


 こうした意見に全国専修学校各種学校総連合会会長の福田益和委員から専修学校等は私学助成の対象となっていないため公認会計士等の監査を受けていない準学校法人があり公認会計士等の監査は学校法人にとって財政負担になることへの配慮を要請。全日本私立幼稚園連合会副会長の尾上正史委員も助成法による公認会計士等の監査の対象にならない幼稚園も少ないがあることを説明、配慮を要請した。そのほかの委員からこうした考え方に異論はなかった。


 内部統制に関しては尾崎委員が「ゼロベースでつくるのではなく、すでに学校法人では色々なマニュアルで統制が行われている。それを体系化・制度化していくことが内部統制を求めていることの実質だ」と語った。


 情報の開示に関しては、日本私立大学協会会長の小原芳明委員が実例を挙げて風評被害が懸念される、として慎重な取り扱いを要請した。


 その後、休憩を挟んで福原主査の「覚書」第2弾の審議に移ったが、冒頭、全私学連合の田中愛治代表(日本私立大学連盟会長)が幼稚園から大学までの私学6団体の正副会長が3月4日に集まって学校法人ガバナンス改革に関する考え方をまとめたことを報告。その基本は、(1)理事会の機能・役割は学校法人の運営に関する最終意思決定(政策立案)と執行、(2)評議員会は理事会の諮問機関であることを原則とし、理事会や監事が万一機能しないような非常時は評議員会が理事会に対して牽制機能を発揮できる、(3)理事と評議員の兼務は禁じ、評議員数の下限を引き下げる。ただし評議員であった者の理事就任、その逆も認め、役員近親者の就任、教職員の兼任は一定上限まで認め、所轄や規模の違いなど私立学校現場の実情を考慮して決める、(4)理事と評議員の人数、選任方法については私立学校現場の実情を考慮して決める、(5)監事は理事会とともに評議員会の業務についても監査し、不適切な意思決定や行為がなされていると判断した場合は是正勧告を出す、だと説明。その上で学校法人に異常事態が発生した場合には理事会、評議員会、監事が三すくみとなり互いに是正される体制が必要としている。全専各連会長の福田委員も全私学連合の考え方と共通認識を持っていると語った。この考えにその他の委員から異論はなかった。


 福原主査の覚書第2弾の概要は別掲の通りだが、そこにある大規模大臣所轄学校法人については監事の一部を常勤化することに関しては田中委員が弁護士や公認会計士を常勤で雇用すると高額な給与支払いが必要となると指摘したが、福原主査は職員が立場を変えて常勤の監事になることなども考えられると語った。


 また尾崎委員からは学校法人の規模に応じた取り扱いに関して、大臣所轄法人(大学法人、短大法人、高専法人)か知事所轄法人(高校等法人)の区分しか示されていない点を指摘、具体的な中身や規模に関わらず共通項をどうするかなどを質したが、具体的には次回に提示され、議論する。


第4回学校法人制度改革特別委員会

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