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記事2022年3月3日 2571号 (1面) 
教育未来創造会議WGを開催
大学等の機能強化に向けて
国・公・私大団体等から意見聴取

 岸田総理が議長を務める政府の「教育未来創造会議」は昨年12月27日に初会合を開き活動を開始したが、実質的な審議の舞台となる同会議のワーキンググループ(清家篤座長=日本私立学校振興・共済事業団理事長)は1月24日に第1回WGを、2月17日には第2回WGを開催。第1回WGでは議論する論点案が提示され、構成員が意見を発表、また論点案の中の大学等の機能強化、学びの支援の充実、学び直しの推進を中心に議論が始まっている。


 第2回WGでは国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学連盟、日本経済団体連合会から意見聴取を行った後、主として大学の機能強化に向けた論点についてWGの有識者から、▷農業大学で取り組む文理融合型教育の実例紹介、分散したキャンパスでの対面も継続しつつのハイブリッド教育や場所を選ばず就農しながら学ぶ方式の検討、必要とされる人材像の固定は難しいこと、多様な学びとアフターコロナとに対応したキャンパスの必要性、社会全体で博士の多様なキャリアパスを創造する必要性などの意見が出された。


  特に深掘りを行った大学等の機能強化に向けた論点に関しては、事務局から具体的課題例として、学部や修士・博士課程の再編・拡充に当たって障壁となる課題(制度面や環境整備における課題、教員の確保方策など)、学部等の再編や強化に際して一定の投資が必要な場合や定員未充足が続く学部等を擁する場合の支援の重点化・メリハリつけの在り方、高専、専門学校、大学校、専門高校の機能強化に向けた方策や大学との連携の在り方、基礎素養としてのデータサイエンス等の必修化など全学的な履修促進、複数の主専攻での学び(ダブルメジャー)の促進、企業や官公庁における修士・博士人材の採用・任用強化、女性枠・留学生枠の設定などポジティブアクション的な施策の在り方、デジタル・グリーン社会の最先端社会実装と教育の場としての大学等が挙げられた。


 一方、第2回WGでのヒアリングでは大学団体等が意見を述べたが、このうち私大連盟からは村田治副会長(関西学院大学長)が大学の機能強化、学びの支援、学び直し(リカレント教育)について意見を述べ、「今こそ大学は学修者本位の教育に転換すべきで、私立大学の特徴や多様性を支援し、大学間や産学間の連携を推進するという高等教育政策の方向付けがされるべき」とした上で、「大学等の機能強化のためには足かせとなっている規制を見直すべきで、これまでのような外形的な基準で質を測るのではなく、学生個人の学修成果や学びの成長度を重視していくことが重要」と指摘。


 また学びの支援では「学生一人当たり公財政支出に係る13・5倍に上る国私間格差の是正、具体的には高等教育機会均等拠出金制度の創設を」と提案。さらに学び直し(リカレント教育)に関しては、「各地方自治体において、産官学連携を担う部署を必置化することや大学設置基準でもリカレント教育の位置付けを検討することなどが必要」と指摘した。


 また、国立大学協会は、「国立大学はわが国の研究開発の基礎であり、最先端の現場である。産業界との連携も飛躍的に伸び、産業発展を支える中核」と訴え、「国の未来、地域の未来を支える人材を育むそのためには、基盤を固め基礎体力を強化することが必要」とし、具体的には運営費交付金の拡充や施設整備費補助金等の拡充、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの支援の拡充、手続きの簡素化が必要」と指摘している。


 同時に国立大学は設立以来の使命に加え、新たに機能を強化・拡充すると述べており、高度にレジリエントで持続可能な社会の構築にこれまで以上に貢献すること、AI技術、ビッグデータ解析に長けた人材の育成等について中核となって担うこと、地方創生の中核としての役割を今後一層強化すること、強靭でインクルーシブな社会の実現に向け多様なステークホルダーとともに前進し、持てる総力をつぎ込む覚悟を表明している。


 公立大学協会は、大学等の機能強化に関しては、地方自治体における高等教育に対する責任体制づくりの支援等を、学びの支援に関しては低所得者層に対する経済的支援の充実、大学院生への経済的支援と企業の受け入れ支援、学び直し(リカレント教育)ではリカレント教育に対する継続的な支援を要望している。


 このほか日本経済団体連合会は新しい時代への対応に向けて経済界が期待する大学教育改革として、三つのポリシーに基づき、入学から卒業までの一貫した「教学マネジメント」を確立すること、ディプロマ・ポリシーにより「出口における質保証」の強化が重要と指摘している。大学設置基準に関しては定員管理(学部単位から大学単位へ、単年度単位から複数年度の平均値へ)、教育課程(オンライン授業による修得単位数の上限撤廃)、校地・校舎等の施設及び設備(質的評価への移行)等を求めている。

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