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記事2022年4月13日 2575号 (1面) 
私立学校法改正法案骨子案を公示
文部科学省 5月3日までパブコメ実施
国会提出へ準備進める

 学校法人のガバナンスの在り方の見直しを進めている文部科学省は4月4日、「私立学校法改正法案骨子案」(本紙3面に全文掲載)を公示し、5月3日23時59分まで意見を募集している。いわゆるパブリックコメントと呼ばれる意見募集で、行政手続法に基づく意見募集ではなく任意の意見募集。同省のホームページ等から意見を投稿できる。


 この骨子案は3月29日に公表された同省の大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改革特別委員会(福原紀彦主査=中央大学大学院教授)の報告書「学校法人制度改革の具体的方策について」等を踏まえ、現在、国会提出を準備中の私立学校法改正法案の骨子案。


 学校法人のガバナンスの在り方に関しては、最近では平成16年(外部役員の導入、監査報告書の制度化等)、平成26年(所轄庁による措置命令・解任勧告、報告検査等)、令和元年(特別利害関係理事の議決権排除、監事による理事会の招集権、理事の行為の差止請求権等)に私立学校法の一部改正が行われ、令和元年の施行後5年を目途とした施行状況の検討を求められていたこともあって、令和3年には同省の学校法人のガバナンスに関する有識者会議が3月に提言を、12月には学校法人ガバナンス改革会議が改革案をまとめている。


  しかし後者の改革会議の改革案等に対して私学関係者や国会議員等から実効性等に関して懸念や疑問の声等が上がったのを受けて、改めて同省が、公益法人である学校法人にふさわしいガバナンスについて学校法人の沿革や多様性にも配慮しつつ、また社会の要請にも応え得る、実効性ある改革に向け関係者の丁寧な合意形成を図るべく、今年1月に特別委員会を設置。教育現場の声や実情を聴取した上で報告書をまとめ、それらに沿って今回、私立学校法改正法案の骨子案がまとめられ、国民から意見を聴取するもの。


 私立学校法改正法案骨子案は基本的に3月29日に公表された報告書に沿った内容だが、一部報告書より踏み込んだ記述も見られる。


 骨子案の基本的な考え方としては、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方から各機関の権限分配を整理、「建設的な協働と相互けん制」の確立する観点から必要な法的規律を共通に明確化して定める。また大臣所轄学校法人(大学等)と知事所轄学校法人(高校等)の区分、その他の規模に応じた区分を設け、寄附行為による自治を一定の範囲で許容し、学校法人の実情に対応するとしている。知事所轄学校法人であっても、全国的に展開する大規模な法人については大臣所轄学校法人と同等の扱いとするとし、広域通信制高等学校を運営する法人を例示している。広域通信制高校の中には1校で1万人を大きく超える生徒数を抱える高校もある。このほか所要の準備期間を設けるとしており、大臣所轄学校法人以外の法人を中心に必要に応じて経過措置を定めるとしている。


 学校法人における意思決定では学校法人の基礎的変更(任意解散・合併)および重要な寄附行為の変更については理事会の決定と評議員会の決議(承認)を要するとしている。


 理事・理事会に関しては、理事長の選定・解職は理事会で行うこととし、業務に関する重要な決定については理事への委任を禁止している。理事の選任機関は評議員会その他の機関を寄附行為で定め、評議員会以外の機関が選任を行う場合、評議員会の意見を聞くこととしている。


 理事の解任については客観的な解任事由(法令違反、心身の故障等、寄附行為で定める)を定め、評議員会に解任請求、理事の行為の差止請求、訴訟提起の権限を付与している。理事の任期は4年が上限。このほか個人立幼稚園などが学校法人化する場合の理事数等の取り扱いを定めるとしている。


 評議員・評議員会に関しては、理事と評議員の兼職を禁止。評議員の下限定数は理事の定数を超えるまで引き下げるとしている。評議員の選任は評議員会が行うことを基本としつつ、理事・理事会により選任される者の評議員の定数に占める数や割合に一定の上限を設け、教職員、卒業生、役員近親者や同一団体所属者については一定の条件を設ける。評議員の任期は6年が上限。


 監事の選解任は評議員会の議決で行うこと、役員近親者の監事就任は禁止。監事の任期は6年を上限に理事の任期と同等以上であること、特に大きな大臣所轄学校法人については監事の一部を常勤化するなどと定めている。


 会計監査については、大臣所轄学校法人においては会計監査人が行い、その選解任の手続きや欠格要件等を定めるとしている。私学助成の交付を受けていない法人も含め計算書類や会計基準を一元化し、計算書類の作成期限を会計年度終了から3カ月以内に延長、大臣所轄学校法人が会計監査人による会計監査を受ける場合に私立学校振興助成法に基づく公認会計士または監査法人による監査を重ねて受ける必要が生じないよう措置するとしている。


  内部統制システムの整備に関しては、大臣所轄学校法人が必要なリスクマネジメント、内部監査、監事の補助、職員等から監事への内部通報等に係る内部統制システムの整備を決定する義務は理事会が行うことを明確化する、としている。


 その他では、監事の子法人の役職員の兼職禁止、役員等による特別背任、目的以外の投機取引、贈収賄等についての刑事罰の整備、理事会および評議員会の議事録作成・閲覧や画一的・早期の紛争解決に資する訴訟制度の整備など学校法人固有の事情の考慮を特段要しない事項については、他の法人制度を参考に導入する、としている。


 


 同骨子案への意見提出は以下WEBフォームで


 https://forms.office.com/r/7z3DdRsd9a


 電話による意見受け付けはない。

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