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記事2022年4月23日 2576号 (1面) 
我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方示す
教育未来創造会議が第1次提言素案公表
成長分野への大学等の再編促進
官民共同修学支援プログラム創設

 政府の教育未来創造会議(岸田文雄議長=内閣総理大臣)は4月18日、第4回ワーキンググループ(清家篤座長=日本私立学校振興・共済事業団理事長)を文部科学省等で開催した。この日は第1次提言「我が国の未来をけん引する大学等と社 会の在り方について」の素案について審議が行われた。今後さらに議論を深め、政府のいわゆる「骨太の方針」に施策が反映できるよう5月中に初めての提言をまとめることにしている。


 同会議の設置の趣旨は、我が国の成長の源泉である未来を担う人材を育成するためには、高等教育をはじめとする教育の在り方について、国としての方向性を明確にするとともに、誰もが生涯にわたって学び続け、学び直しができるよう、教育と社会との接続の多様化・柔軟化を推進する必要がある、ということ。昨年12月27日に第1回会議を開催している。


  同会議は閣僚と有識者が参加する全体会議(構成員25人)と末松信介・文部科学大臣兼教育再生担当大臣と有識者計16人による具体的な検討の場であるワーキンググループがある。これまでに全体会議を2回、WGを4回開催している。


 主な論点案としているのは、(1)未来を支える人材を育む大学等の機能強化=今後の我が国の成長に向けて特に重点を置くべき分野(デジタル、人工知能、グリーン、観光や農業を通じた地域振興など、デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育の推進)に関する大学、短大、高専、専門学校等の在り方、大学法人のガバナンス強化、(2)新たな時代に対応する学びの支援=大学卒業後の所得に応じた「出世払い」を行う仕組みを含む、教育費等への支援、(3)学び直し(リカレント教育)を促進するための環境整備=学び直した成果の適切な評価、学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境の整備。今回の第1次提言の素案は同WGで検討されている。


 素案は約30ページで、はじめに、T背景(我が国の現状、人材育成を取り巻く課題)、U基本的考え方(基本理念、在りたい社会像、目指したい人材育成の在り方)、V具体的方策(未来を支える人材を育む大学等の機能強化、新たな時代に対応する学びの支援の充実、学び直し〈リカレント教育〉を促進するための環境整備)からなっている。その中で未来を支える人材像については、主体性、創造性、共感力のある多様な人材、具体的には身近なものから地球規模のものまでさまざまな社会課題を発見し、横断的な観点から解決していくことのできる人材、急激な社会環境の変化を受容し、エシカルな行動ができる人材、新たな価値を生み出していく精神を備えた人材などとしている。


 具体的方策のうち大学の機能強化に関しては、進学者のニーズ等も踏まえた成長分野への大学等の再編促進と産学官連携の強化、学部・大学院を通じた文理横断教育の推進と卒業後の人材受け入れ強化、理工農系をはじめとした女性の活躍推進、グローバル人材の育成・活躍推進、デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育への転換、大学法人のガバナンス強化等を提言。 


 また新たな時代に対応する学びの支援の充実に関しては、大学卒業後の所得に応じた「出世払い」を含む、教育費等への支援、官民共同修学支援プログラムの創設、博士課程学生に対する支援の充実、地方自治体や企業による奨学金の返還支援、早期からの幅広い情報提供を進める考え。


  学び直し(リカレント教育)を促進するための環境整備に関しては、学修歴や必要とされる能力、学びの可視化等、企業における学び直しの評価、学び直し成果を活用したキャリアアップの促進、費用、時間等の問題を解決するための支援、高齢世代の学び直し促進、女性の学び直しを促進するための環境整備・プログラムの充実、大学等におけるリカレント教育の強化等を進める意向。


 今回の第1次提言は大学等を主に念頭に置いた政策となりそうだが、課題発見・解決能力等を育む学習の充実等に関しては、初等中等教育段階からの取り組みの重要性を指摘している。

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