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記事2022年5月23日 2579号 (1面) 
私立学校法改正法案骨子決定
骨子案から大きな変更なし
私立学校法改正法案等今国会提出は困難

 文部科学省は5月20日、「私立学校法改正法案骨子」を公表した。3月29日に公表された同省の大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改革特別委員会の報告書を受け、4月4日に私立学校法改正法案骨子案を公示、国民から意見を公募する手続き・パブリックコメントを5月3日まで行っていた。パブコメには合計329件の意見が寄せられ、その意見も参考に骨子案の文言を2カ所修正し骨子としたが、骨子案から大きな変更は行っていない。末松文科大臣は5月10日の定例の記者会見で6月15日までの今国会中に私立学校法改正法案等を提出するのは厳しい情勢だが、できるだけ早期に法案を国会に提出できるよう最大限努力したいと語っている。


 パブコメに寄せられた意見に対して文科省は同省の考え方を説明している。「骨子案は(前身の)学校法人ガバナンス改革会議報告書から大幅に後退しているではないか」との意見に対しては、改革会議の提言事項が実効性ある形で実現されるよう、学校法人の持つ独自性などに配慮して適切な見直しを加えつつ、関係者の合意形成を丁寧に図りながら議論、学校法人のガバナンス改革を着実に進めるものになっている」と説明。


 また今後、さらに検討していく事項についても説明しており、「中高校の知事所轄法人が大臣所轄法人と同じように規制や制限等が行われ、今以上の負担が生じないよう慎重な対応をすべき」、「細やかな経過措置を設けるべき」との意見に対しては、「新制度の経過措置については、現状から変更が生じる事項について負担の軽減と運営の継続性を確保する観点から、準備期間との関係を踏まえ、他法人制度の施行時の対応を参考にして検討していく」とし、「評議員会の議決事項に、中期的な計画、役員報酬基準、計算書類の承認、組織変更を追加すべき」との意見に対しては、「中期計画や役員報酬基準などの重要な業務の基本方針についても、理事会決定に加えて評議員会の決議(承認)を要する位置付けとしていくことを、引き続き検討すべきだとされたことを踏まえ、引き続き検討していく」と回答。


 関連して「大臣所轄学校法人において評議員会の決議(承認)を要することとされている重要な寄附行為の変更の範囲が必ずしも明確ではない」との意見に対しては、「下位法令(文部科学省令)の検討の中で、広くご意見を伺いながら検討したいと考えている。その際、学校法人にとって重要な寄附行為の変更とは何かという観点で検討を行う予定」と説明している。


 また特別委員会での議論で大きな焦点の一つとなった理事と評議員の兼職禁止については、「大臣所轄学校法人、知事所轄学校法人、準学校法人を問わず一律に適用すべきであるため、経過措置を設ける必要がない」「新たな人選困難の問題も生じる懸念がある。したがって法人の規模に関係なく、経過措置・柔軟な措置等の配慮が必要」など賛否両論があったが、文科省は「評議員の確保のため兼職関係を維持することには慎重であるべきとしつつ、移行に向けての一定の配慮も検討すべきとされた。これらも踏まえ今後具体的な在り方について検討していく」と回答。


 このほか評議員の再任の回数制限を求める意見に対して同省は、「各関係団体におけるガバナンス・コード等の自主的な取り組みを含め今後検討される必要があると考えている」と答えている。


 評議員会における教職員や役員近親者、同一団体所属者等については様々な意見が寄せられたが、同省は一定の上限を定めることとし、具体的な算出方法等については引き続き検討の意向を明らかにしているが、同一団体所属者については多様な実態を捉えるため、その範囲については省令事項とすること、そのため省令案にあった上限設置の対象としていた教職員、役員近親者や同一団体所属者との文言を教職員、役員近親者等に修正している。


 また骨子案から骨子の段階で修正したもう一つの箇所は、監事の子法人の役職員との兼職禁止の箇所(骨子案九の1)。その兼職禁止は業務執行者等を対象としたもので、子法人の監事・監査役等の兼職は禁止する必要がないとし、骨子では「監事が子法人の業務を執行する理事・取締役や社員等を兼職することを禁止する。子法人から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務で継続的に報酬を受けている者を会計監査人にしてはならないこととする」との記述に修正している。

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