こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> 2022年5月3日号二ュース

記事2022年5月3日 2578号 (1面) 
教育未来創造会議第1次提言をとりまとめ
自然科学分野の学生割合、5割程度を目指す
私学助成の見直しも提言

 岸田文雄・内閣総理大臣が議長を務める「教育未来創造会議」の第3回会議が5月10日、総理官邸で開かれ、昨年12月の発足以来、初めての、「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について」と題する第1次提言案について議論し、取りまとめた。第1次提言では、我が国が置かれている現状や人材育成を取り巻く課題を踏まえ、基本理念、在りたい社会像、目指したい人材育成の在り方を整理した上で、(1)未来を支える人材を育む大学等の機能強化、(2)新たな時代に対応する学びの支援の充実、(3)学び直し(リカレント教育)を促進するための環境整備に特に焦点を当てて、今後取り組むべき具体的方策を提示している。今後5〜10年程度の期間に集中的に意欲のある大学の主体性を生かした取り組みを推進していく。


 岸田総理は提言の取りまとめに際して、「人への投資を通じた成長と分配の好循環を教育・人材育成においても実現することは新しい資本主義の実現に向けて喫緊の課題。このため自然科学分野の学生の割合についてOECD(経済協力開発機構)諸国で最も高い水準である5割程度(現在は35%)を目指すなど具体的な目標を設定し、デジタル・グリーン等の成長分野への大学等再編に向けた大胆な規制の緩和と初期投資や開設年度からの継続的な支援、高校・大学・大学院を通じた文理横断教育の推進、理系女子の活躍促進に向けた官民総がかりの機運醸成、給付型奨学金・授業料減免の中間層への拡大や、ライフイベントに応じた柔軟な出世払いの仕組みの創設、産業界を巻き込んだリカレント教育強化に向けた大学等における組織整備やガイドラインの策定、こうしたことについて、速やかに法令改正や予算措置等の準備を進め、実行に移していく」などと語っている。


 またこれら以外の事項を含めて、末松信介・文部科学大臣兼教育再生担当大臣を中心として施策の工程表を今年の夏までに作成することも明らかにしている。


 第1次提言は、全体で約40ページ。はじめに、T背景、U基本的考え方、V具体的方策、おわりに、の構成。人材育成を取り巻く課題については、デジタル・グリーン人材の不足、高校段階の理系離れ、諸外国に比べて理工系の入学者、世帯収入が少ないほど低い大学進学希望者、進まないリカレント教育などだとし、その上で在りたい社会像についてはウェルビーイングの実現、社会課題への対応、SDGsへの貢献、生産性の向上と産業社会の活性化、全世代学習社会の構築等を挙げている。


 そうした社会を実現するため、同会議が第1次提言で特に焦点を当てた、三つの課題のうち、(1)未来を支える人材を育む大学等の機能強化では、大学設置に係る規制の大胆な緩和、複数年度にわたり予見可能性を持って再編に取り組めるよう初期投資(設備等整備等)や開設年度からの継続的な支援、私学助成に関する全体の構造的な見直し(定員未充足大学の補助金減額率の引き上げ、不交付の厳格化等)、高専、専門学校、大学校、専門高校の機能強化、大学の教育プログラム策定等における企業・地方公共団体の参画促進、地域における大学の充実や高等教育進学機会の拡充、STEAM教育の強化、文理横断による総合知創出、企業や官公庁における博士人材の採用・任用強化。女性活躍プログラムの強化、知識と知恵を得るハイブリッド型教育への転換、社会のニーズを踏まえた大学法人運営の規律強化等を提言。


 また(2)の課題、新たな時代に対応する学びの支援の充実では、学部段階の給付型奨学金と授業料減免の中間層への拡大、ライフイベントに応じた柔軟な返還(出世払い)の仕組みの創設、地方公共団体や企業による奨学金の返還支援、入学料等の入学前の負担軽減等を提言。(3)の課題、学び直し(リカレント教育)を促進するための環境整備に関しては、学び直し成果の適切な評価、学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備、女性の学び直しの支援、企業等におけるリカレント教育による人材育成の強化等を推進する意向。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞