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記事2022年6月13日 2581号 (1面) 
課題解決を成長のエンジンに
新しい資本主義を実現
人等へ重点的に投資
デジタル人材、5年で3倍増

 岸田文雄総理は6月7日、総理官邸で令和4年度第8回経済財政諮問会議と第9回新しい資本主義実現会議を開催した。この合同会議では、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(案)と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(案)について議論が行われ、取りまとめられた。その後、持ち回り臨時閣議でこれら二つが閣議決定された。


 このうち後者の、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」は岸田内閣の成長戦略というべきもの。岸田内閣が主要政策とする「新しい資本主義の実現」の基本的な考え方や、新しい資本主義に向け、人、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX(グリーン・トランスフォーメーション)とDX(デジタル・トランスフォーメーション)を4本柱に重点投資を行うことが盛り込まれている。


 新しい資本主義はさまざまな弊害を生んだ新自由主義の反省を踏まえ、(1)「市場も国家も」、「官も民も」によって課題解決、(2)課題解決を通じて新たな市場を創る、つまり社会的課題解決と経済成長の二兎を実現、(3)国民の暮らしを改善し、課題解決を通じて一人一人の国民の持続的な幸福を実現することを基本思想にしている。


 そのうち人への投資では賃金引き上げの推進、職業訓練、学び直し、生涯教育等への投資を進め、一般の人が企業間の労働移動が容易になるよう、就職やキャリアアップについて、キャリアコンサルティングを受けることができる環境を整備、従業員、経営者、教育サービス事業者などの一般から募集したアイデアを踏まえた3年間で4千億円規模の施策パッケージに基づき、非正規雇用者を含め能力開発支援、再就職支援、他社への移動によるステップアップ支援を講ずる。これらで約100万人が利益を受けると想定している。 またデジタル人材に関しては2026年度までに合計330万人を確保する(現在は100万人)。全国の大学等でAI・データサイエンス・数理の教育を強化、文系、理系を問わず人材を育成。また企業の従業員の副業・兼業を拡大する。また、こども家庭庁を創設、保育、放課後児童クラブの充実、出世払い型奨学金の本格導入(まずは大学院段階で導入)、理工系や農学系の分野に進学する女子学生への官民共同の修学支援プログラムを創設。男女間の賃金格差の開示義務化(絶対額ではなく男性賃金に対する女性の賃金の割合を、正規・非正規に分けて開示)等を進める。


 科学技術・イノベーション分野では、量子技術、AI実装、バイオものづくり、再生・細胞医療・遺伝子治療はわが国の国益に直結する分野として、国家戦略を策定、官民が連携して投資の抜本拡大を図り、科学技術立国を再興する、としている。この分野では大学教育改革も重視しており、10兆円規模の大学ファンドによる支援のほか、大学に対する規制を大胆に見直すとともに、学部再編に要する初期投資や再編後の当面の運営経費に対する継続的な支援を行う。理系女子の活躍促進に向けて、女子学生枠の確保に積極的に取り組む大学等への支援を強化、女性の在籍・登用状況等の情報開示を促進する。高校段階でも文理横断教育を推進する。


 スタートアップに関しては、内外の大学の誘致を含め、スタートアップが集積するキャンパス作りを推進。産業界の協力を得て、初等中等教育等で起業家教育を推進。スタートアップが大学の知的財産権を事業化する環境整備に向け、大学の国際特許出願に対する支援強化、共有特許ルールの見直し、大学による株や新株予約権の取得に際しての制限の撤廃等を進める、などとしている。


 こうした実行計画を推進するため、5年間を目途とする工程表を、今年中に策定する。

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