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記事2022年7月13日 2584号 (1面) 
第5回校務の情報化の在り方会議開く
論点整理の修正版について議論
今後の校務支援システムの在り方でベンダー3社が発表

 文部科学省は6月28日、第5回「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する有識者会議」(座長=堀田龍也・東北大学大学院教授)をオンラインで開催した。


  前回の会議での論議を参考にして作成した論点整理の修正版について文科省担当者から説明があった。総論には、校務の情報化の意義を整理する際には教職員の負担軽減だけでなく、教育活動の充実や保護者とのコミュニケーションの活性化も強調すべきで、教員が行う業務とそうではない業務を仕分け、ICTの専門家や事務職員などの教員以外の者も含めて対応していくことが必要で、教育委員会が段階的にステップアップを目指すこと、などが付け加えられた。


 各論では短期的目標に、校務支援システムのフルクラウド化を検討すべきで、「教育情報セキュリティーポリシーガイドライン」は必要に応じて見直すべきであり、大規模災害や感染症などの緊急時の業務の継続にクラウドサービスが必要であることなどが追記された。


 中期的・段階的に目指す方向性は、最終的にはアクセス制御によるセキュリティーの確保、学習系と校務系ネットワークの統合で、教職員の負担軽減、コスト面の合理化を可能にすることなどが加えられた。


 情報提供として、株式会社エデュコム、スズキ教育ソフト株式会社、株式会社システムディのベンダー3社から、論点整理への意見や今後の校務支援システムの在り方などの発表があった。


 エデュコムは、週案の作成を例に挙げ、重要なのは、週案を作成、運用することではなく、目標達成のために的確な指導のPDCAを行うことである、とした。GIGAスクール構想により、教師、児童生徒の記録や活動はすべてログとして残り、指導のPDCAは変化する。校務系システムと学習系システムを連携させることで、教師も児童生徒も最適なPDCAを展開することができるとした。校務の情報化の目的が、校務の効率化、教育の質の向上であると考えると、今後は現行の通知表、成績処理、指導要録、学校日誌の在り方を見直す余地もあるのではないかと提案した。


 スズキ教育ソフトは、論点整理の短期的に目指すべき目標の、大規模災害や感染症などによる緊急時における校務の継続性の確保についてコメントした。


 一般企業で用いられている閉域ネットワークに構築された社内システムで、出先からアクセスするために使われる技術を活用すれば、校務系と学習系ネットワークが分離した環境でもセキュリティーを担保しながら、どこにいても校務処理ができると指摘。中期的・段階的に目指すアクセス制御によるセキュリティーの担保には、信頼できる認証基盤(複数のID、パスワードなどログイン情報を一元管理する仕組み)を利用したゼロトラストセキュリティー(何も信頼しないことを前提に対策を講じるセキュリティーの考え方)を提案した。生体認証などを用いることで実現可能となる。このような取り組みを目指す上で障害となるのは、クラウドサービスがあっても、その利用に耐えられるネットワーク環境が整備されていないこと、そしてゼロトラストセキュリティーを確保しても、利用者が端末やアカウントの管理などの情報セキュリティーの意識を向上させなければ意味がないなどと述べた。


 システムディは、短期的な方向性として、校務支援システム、グループウエアなど各種のサービスを一括で調達することは柔軟性に欠けるので、クラウドなどの活用で必要なサービスだけを個別に調達することを提案した。校務系と教育系システムが分離しており、大胆なデータ活用は難しく、学習系データを主体としたデータの利活用に偏らざるを得ないことが将来的な懸念だ、とした。


 委員からのベンダーへの質疑では「クラウド化でコストは本当に抑えられるのか」との質問が出た。ベンダーは「指導要録でも学校ごとに何らかの形でカスタマイズされている。全国完全統一しなければクラウド化してもコストの削減は難しい。コストダウンにはデータの標準化を検討する必要がある」と回答した。


 「統合型のシステムの導入で機能が増え、かえって先生たちの作業が増えてきている気がする」との意見に対して、「紙ありきではなく、本当に必要な情報の内容、保管、閲覧方法が標準化されれば、それに合わせた形でシステムを提供できると考える」と回答した。


 また、委員からは、「教師はデータの入力に忙殺されている。入力しないでデータ化できる方法はないのか。子供の学習データと教師の記録データの入力が簡素化できればDX化は進むだろう。リアルタイムで学習データと教師の記録が更新されるのならば、年2回の通知表の必要があるのかとも思う」との意見もあった。


6月28日の第5回会議

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