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記事2023年1月23日 2601号 (1面) 
第8回大学振興部会開催
今後の大学教育の振興方策審議了承
出口における質保証、文理横断融合等提言

 中央教育審議会大学分科会の第8回大学振興部会(部会長=永田恭介・筑波大学学長)が1月13日、オンラインで開かれ、昨年6月以降、検討を続けてきた「今後の大学教育の振興方策」について最終の審議を行った。この日示された素案に対して委員からさまざまな意見が出されたが、基本的には異論はなく、まだ検討が終わっていない学生保護の仕組みの整備については審議状況を整理し、素案と共に1月25日の大学分科会に報告する。


 第8回大学振興部会では、初めに文部科学省から、昨年12月21日の第170回大学分科会で委員から出された意見により文言を追加修正した箇所等を中心に説明があった。素案「今後の大学教育の振興方策について」は、(1)主専攻・副専攻の活用等を含む文理横断・文理融合教育の推進、(2)「出口における質保証」の充実・強化、(3)今後、急速に進む少子化により数多くの大学等の経営が厳しくなり、経営破綻等が予測される中で必要となる、学生保護の仕組みの整備が三本柱。


 このうち文理横断・文理融合教育に関しては、人文・社会科学専攻の学生が自然科学分野の素養を培う側面が強調されがちだが、逆に自然科学を専攻する学生が歴史的視点や規範的判断力を身に付ける上で人文・社会科学の学問分野を学ぶ重要性を明記。


 「出口における質保証」の充実・強化では、これまであまり言及のなかった短期大学に関して教育課程の特徴や課題等の記述を追加、またオンライン授業に関して大学での検証や技術の進展状況等を踏まえつつ、オンライン授業の質保証、対面とのハイブリッド型教育の確立に向けガイドラインの策定等が必要なことを指摘。学生に密度の濃い学修を求める意味で卒業論文の在りようこそが国際標準の取り組みだとの指摘もあることに言及。


 「学生保護の仕組みの整備」に関しては主な課題・論点の類型として以下の5点を挙げている。(1)破綻を避けるために学校法人(大学)が行うこと、(2)破綻が避けられない場合に学校法人(大学)が行うこと、(3)破綻リスクを低減するために国等が行うべき措置、(4)破綻時に国等が学生を保護するために取るべき措置、(5)撤退・破綻する大学に関する手続き、取り扱いの検討。


  学生保護の仕組みの整備に関しては、私立大学や私立短期大学の入学定員の未充足の状況や収支状況等が地域別にグラフで紹介されたほか、私立学校法の改正の経緯や経営破綻から学校法人に解散命令が出された事例などが紹介された。


  こうした同省の説明に委員からは素案に関して、文理横断・文理融合教育の推進に向けた方向性の中での「ややもすれば専門教育が重要で教養教育を面倒な義務と考える教員が存在すること」などの記述に対して、過激な書きぶりを懸念する意見や、文理分断からの脱却に向けた高大接続改革に関して、「高大接続は重要なポイント。高大接続が入試改革と同義で語られているが、もっと学びの接続が重要となっている」、また「キャップ制だけで学生の学修時間は増えない。授業改善とセットでないといけない」といった意見が聞かれた。


 このほか高等教育の修学支援新制度の見直しで定員充足率が機関要件とされることを挙げて学生保護の観点から逆行している」と指摘する意見、「国際的・グローバルな言及がほとんどない」を指摘する意見、大学入学者を依然18歳中心に考えていることへの疑問や留学生を増やすための入試のあり方の検討の必要性、大学入学共通テストが日本人・平等のための選抜となっていること、同テストの前倒し実施などの意見が出されたが、「私大では内部からの推薦入学が増えており、入学者選抜はテストだけではない。学びの接続を考えるべきだ」といった意見、パートタイム学生の位置付け、学生とは何かの議論を求める意見なども聞かれた。


  一方、学生保護に関しては、「経営の悪化は地方での人口減少によることが大きく、地域で頑張っている大学等をどう評価するかだ」といった意見が聞かれた。


中教審の第8回大学振興部会

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